うちの子流~発達障害と生きる

発達障害を持つ子供たちとの日々をつづります。

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特別支援教室ってなんだろう?変わりゆく支援体制と合理的配慮について

東京都の公立小学校へ平成28年度より順次「特別支援教室」が導入されることが発表されました。

今までの情緒障害等通級指導教室が「特別支援教室」となり大きく体制も変わるそうです。

つまり知的障害を持たない自閉症スペクトラムやADHD、学習障害などの発達障害児に対する支援体制が大きく変わるということです。

国が今特別支援教育からインクルーシブ教育にシフトしていくという話があり、特別支援教室構想はずいぶん前から文部科学省の方で上がっていたようです。

なので現在は東京の話ですがいずれは全国に展開されるのではないかと予想しています。

www.kyoiku.metro.tokyo.jp

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/buka/gakumu/tokubetushien_kyoushitu/besshi.pdf

こちらのPDFはその内容についてのリーフレットです。

 

大きく変わる点

今まで通級指導教室が自校にない場合、親の送迎などで他校に通う必要がありましたが、各校に巡回指導教員(今までの通級担任)が巡回して指導を行うこと。他校通級の方が有効だと思われる場合は対応もして下さるとのこと。

在籍学級での様子を見たり、在籍学級担任との密な連携をとって指導の工夫をしていくそうです。

そして導入のサポートとして非常勤の特別支援教室専門員、臨床発達心理士等の巡回も行われるそうです。

 

東京都の支援体制の現状

現状で特別支援教育にも大きな地域格差があります。

過去に私の居住地と東京都の支援体制について調べてみたものがあります。

支援学級、通級教室などの設置数や在籍人数についてのデータを載せています。

nanaio.hatenablog.com

東京都の世田谷区で調べたのですが支援学級は知的だけで情緒の固定学級はなく、知的障害を持たない発達障害児は通級指導教室のみの支援となっているようです。

私の自治体では情緒も知的も支援学級がほぼ各校にあり、現在爆発的に情緒学級が増加しています。 私の息子も情緒の支援学級に在籍しています。

その分通級指導教室の数は世田谷区の半数ほどと少ないですがそれでも待機が出るなど不足しており年々教室も増加しています。

おおまか人数は同じくらいの自治体であり発達障害児自体の数がそう大きく違うとは考えづらいのですが、現状で支援を受けている人数に大きなひらきがあります。支援の必要な子供達にじゅうぶん届いていない可能性があるのではと思います。

情緒障害と言えども通級指導教室だけでは通常の学級に適応が難しいケースも多々あり、固定の情緒支援学級がない東京ではどうしているのだろうと思っていました。

 

現状の通級指導教室の問題点

支援を受ける立場の子の保護者として特別支援教室の導入は素晴らしい内容だと思います。

昨年度いっぱいで退級となりましたが私の娘も情緒の通級指導教室へ3年間通いました。

やはり親の送迎が必要でこれが非常にネックとなっており、自校通級でないかぎり保護者が仕事などで送迎できなければ支援が必要な子供が通うことが出来ないのが現状です。

場所によっては移動のためにかなりの時間を取られること、その分通常の授業を抜けることに対する学習の補てん問題があります。

これは中学校の通級教室の場合、自力で通うことを求められる場合も多く、授業を抜けることが学習の遅れに繋がるのではという不安や部活を抜けられないなどの問題から、支援は受けたくても受けられないお子さんがたくさんいるそうです。

うちの自治体では年に一度の在籍校巡回と指導内容の連絡ノートで在籍校担任と通級担任の間の連携をとっていただいていましたが在籍校での指導工夫の問題など細かな連携をとるには足らないものだと思います。

うちの子供達はたまたま理解ある先生方に恵まれて来ましたが、親の会などで在籍校担任の理解不足による問題も多々伺ってきました。

 

臨床発達心理士巡回への期待と導入にまつわる混乱

特別支援教室の導入にあたって専門の知識を持つ臨床発達心理士さんなどが学校で巡回し相談にあたって下さること。これは大きく期待したいです。

今までも臨床心理士の資格を持つスクールカウンセラーが中学校などに配置され、小学校にも巡回で来て下さっていたそうですが、特別支援教育のために配置されているわけではなく気軽に相談できる状態にあるところは少ないのではないでしょうか。

各校に配置されている特別支援コーディネイターが個々の問題に対応している場合が多いと思いますが、学校によっては養護教諭や管理職や支援学級の先生が兼任で、素晴らしいテクニックを持った先生がなられる場合もあれば、中には特別支援教育や発達障害児に対して知識をほとんど持たない方がなられる場合もあると聞いたことがあります。

発達障害児と一口に言えども本当に特性は様々です。うちに二人いますが同じ診断がついていても性質は正反対で対応ももちろん異なります。

適切な対応をするためには専門的知識と多様なテクニックはかかせないもの。

一般の教育や子育ての知識だけではとうてい足らない部分が出てきます。

私も今まで専門の方々や先輩方に教えて頂いた様々なことでやっと子供の持つ特性と向き合うことが出来るようになりました。

巡回とはいえ学校に専門知識を持つ方が発達障害児対応専門で入られることを私は大きく期待したいと思います。

今までの通級指導教室担任が巡回指導員になられるとのことですが、今までのように生徒が通う場合、うちの自治体では先生一人当たり最大30人までの生徒を受け持つことができていますが、巡回となると移動時間もかかりますし今まで指導を受けたくても送迎の都合などで受けられなかった生徒が増えることも予想されます。

それに在籍学級での行動観察、在籍級担任との密な連携など業務も格段に増えると思われますので現状よりもかなりの増員が必要なのではないでしょうか。

特別支援教室専門員に関してはちらりと退職した校長がなられると噂を聞いたのですがこれはどうなんだろうと・・。もちろん素晴らしい先生もたくさんおられると思いますが、発達障害児の教育には専門の知識はかかせません。連携調整と個別の課題作成を行われるそうですが、しっかりと理解を深めた上で業務にあたって下さったらいいなぁと思います。

 

文部科学省の「特別支援教室構想」とは

文部科学省の特別支援教室構想は今回の東京都の導入の形をさらに進めたものとなっているようです。

資料4:特別支援教室構想について:文部科学省

文部科学省 特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申) [第4章−3(2)]

以下引用させていただきます。

(2)「特別支援教室(仮称)」の構想について

 協力者会議最終報告においては、「特殊学級や通級指導教室について、その学級編制や指導の実態を踏まえ必要な見直しを行いつつ、障害の多様化を踏まえ柔軟かつ弾力的な対応が可能となるような制度の在り方について具体的に検討していく必要がある」とともに、「制度として全授業時間固定式の学級を維持するのではなく、通常の学級に在籍した上で障害に応じた教科指導や障害に起因する困難の改善・克服のための指導を必要な時間のみ特別の場で行う形態(例えば「特別支援教室(仮称)」)とすることについて具体的な検討が必要」との提言が行われた。

 「特別支援教室(仮称)」の構想が目指すものは、各学校に、障害のある児童生徒の実態に応じて特別支援教育を担当する教員が柔軟に配置されるとともに、LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒も含め、障害のある児童生徒が、原則として通常の学級に在籍しながら、特別の場で適切な指導及び必要な支援を受けることができるような弾力的なシステムを構築することであると考えられる。

 この考え方は、小・中学校における特別支援教育を推進する上で、極めて重要であり、また、すでに特殊学級と通常の学級との交流教育という形で弾力的な運用が行われている例があることも踏まえれば、「特別支援教室(仮称)」の構想が目指しているシステムを実現する方向で、制度的見直しを行うことが適当である。

 具体的な「特別支援教室(仮称)」のイメージについては、LD・ADHD・高機能自閉症等を含め、障害のある児童生徒が、原則として通常の学級に在籍し、教員の適切な配慮、ティーム・ティーチング、個別指導や学習内容の習熟に応じた指導などの工夫により通常の学級において教育を受けつつ、必要な時間に特別の指導を受ける教室として、例えば以下のような形態が想定される。いかなる形態の特別支援教室をどのように配置していくかについては、地域の実情、個々の児童生徒の障害の状態、適切な指導及び必要な支援の内容・程度に応じ、柔軟かつ適切に対応することが重要である。

○特別支援教室1

ほとんどの時間を特別支援教室で特別の指導を受ける形態。

○特別支援教室2

比較的多くの時間を通常の学級で指導を受けつつ、障害の状態に応じ、相当程度の時間を特別支援教室で特別の指導を受ける形態。

○特別支援教室3

一部の時間のみ特別支援教室で特別の指導を受ける形態。
これらの形態は、あくまでも例示としてのイメージであって、当然のことながらこれらの形態の中間的なものやこれらの形態を組み合わせたものなども考えられる。

 なお、設置者である市町村教育委員会においては、各小・中学校の「特別支援教室(仮称)」が有するそれぞれの専門性を前提にしながら、特別支援教育のセンター的機能を有する特別支援学校(仮称)及び関係機関との連携協力を進めるなど、各地域におけるニーズに応じた地域全体における総合的な支援体制を構築することが重要である。

現状の通級指導教室、支援学級の持つ機能を合併させたような形で、今まで支援を受けるための障害区分が限られていたものをより柔軟性を持って対応ができるものを目指すそうです。

この構想に移行するための第一歩として今回東京都に特別支援教室が導入されたと考えればいずれ全国に展開されると予想できるのではないでしょうか。

東京都の場合、まずは通級指導教室だけの移行ですが、いずれは支援学級も含めて動き出すかもしれません。

 

インクルーシブ教育への移行と合理的配慮について

私は通級指導教室親の会に所属しており教育委員会の方のお話を伺う機会が何度かあったのですが、その時にも国のインクルーシブ教育推進のお話は出ていました。

共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告) 概要:文部科学省

 

基本的な方向性としては、障害のある子どもと障害のない子どもが、できるだけ同じ場で共に学ぶことを目指すべきである。その場合には、それぞれの子どもが、授業内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身に付けていけるかどうか、これが最も本質的な視点であり、そのための環境整備が必要である。

 

 

上記の概要の中に環境整備を行うために「合理的配慮」という言葉が出てきます。これは国連で採択された「障害者権利条約」に日本が批准したことによるものです。日本では2014年2月19日に効力が発生しています。

障害者の権利に関する条約 | 外務省

資料3:合理的配慮について:文部科学省

 

「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されている。

 

条約への批准に基づき「障害者差別禁止法」が制定され平成28年度4月1日より施行されることになっています。

障害を理由とする差別の解消の推進 - 内閣府

 このことにより、合理的配慮を否定することは障害を理由とする差別に含まれるとなり、法律で禁止されることとなります。

1.「合理的配慮」の定義等について
(1)「合理的配慮」の定義
○条約の定義に照らし、本ワーキンググループにおける「合理的配慮」とは、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」、とする。なお、障害者の権利に関する条約において、「合理的配慮」の否定は、障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある。
(2)「合理的配慮」と「基礎的環境整備」
○障害のある子どもに対する支援については、法令に基づき又は財政措置により、国は全国規模で、都道府県は各都道府県内で、市町村は各市町村内で、教育環境の整備をそれぞれ行う。これらは、合理的配慮の基礎となる環境整備であり、それを「基礎的環境整備」と呼ぶこととする。これらの環境整備は、その整備の状況により異なるところではあるが、これらを基に、設置者及び学校が、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、「合理的配慮」を提供する。

「インクルーシブ教育システム構築に向けた基礎的環境整備と合理的配慮の課題」より引用

http://www.zentoku.jp/houkoku/pdf/shiryo_h26_fujimoto.pdf

 

さいごに

なにやら難しい言葉が並びわかりにくい話も多いですが、これからの発達障害児を取り巻く教育環境が大きく変わりつつあるのは感じていただけたでしょうか。

障害者差別禁止法が来年度より施行されるにあたり、今まで通常学級に置いての配慮を他の生徒に対して不公平だと言われるケースも多々あったことが、これからは必要な合理的配慮をしないことが法令違反となることから、配慮を求めやすい環境となるかもしれません。

もちろん財政や設備や人員の都合で全ての希望を一度に叶えることは難しいでしょうが、交渉しやすくなると思います。

その為にインクルーシブ教育や特別支援教室構想など徐々に制度自体も変わって行こうとしています。

現行の教育現場がこの変革で順調に回っていくまではしばらくの時間が必要でしょうし、実際に動いてから見えてくる問題点も出てくるでしょう。

障害を持つ子供もそうでない子供も等しく教育を受けられる環境の実現を期待しています。

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 ※地域によっては通常学級から支援学級への取り出し授業、またはその逆に支援学級から通常学級への交流を「通級」と呼ぶケースがあるそうですが、支援学級とは別に設置された「通級指導教室」の意味で「通級」と言う言葉を使っております。ご了承ください。

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