うちの子流~発達障害と生きる

発達障害を持つ子供たちとの日々をつづります。

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「先生の声が聞き取れない」 聴覚過敏とカクテルパーティー効果

「クラスの子がしゃべっていると先生の声が聞きとれない」

小学3年の息子が教えてくれました。息子は国語と算数は支援学級、後は交流学級である普通学級で授業を受けています。

元々、特定の音を嫌がり耳ふさぎをしたり、耐えられなくなって外に飛び出すこともあった息子。聴覚過敏の傾向はあるだろうと思っていました。

聴覚過敏といっても人より多くの音が聞き取れるわけではありません。音に対する感じ方が違うのです。

人数の多い交流学級では多くの人の声の中から、先生の声だけを聞き取ることが出来ず、指示がわからなくて困っていると言うのです。

自閉症スペクトラムやADHDなど発達障害の特性として、聴覚や視覚、触覚、嗅覚、味覚などの感覚に大きく違いがある場合があります。おそらく感覚の違いは誰にでもあるものでしょうが、過敏もしくは鈍磨によって、日常生活に困難が出てしまうレベルの場合が多いのです。

感覚の違いというのは、生まれた時からその状態ですし、なかなか人と比べてどうかというのは本人も気づきにくいことです。特に小さい子供の場合は自分で気づいて言語化するのはとても困難なことです。

日常生活や学校生活での困難の原因が、感覚の違いによって起こされていることも多々あります。

 

カクテルパーティー効果が働きにくい

 カクテルパーティー効果とは、音声の選択的聴取のことで、カクテルパーティーのように大勢の人がしゃべっている中でも、会話をしている特定の相手の声だけを聞き分けることが出来るというものです。

つまり多くの音の中でフィルターにかけて自分に必要な情報以外をふるい落とす効果です。

 このフィルターの機能が弱いと全ての音が同列に入ってしまい、なにを言っているのか聞き取れなくなってしまいます。息子はおそらくこの状態になっていると思われます。

これは成長の過程で突然そのようになるケースも聞いたことがあります。

聴覚に限らず、感覚過敏や鈍磨はこのフィルター機能の弱さから来ることが多いそうです。

ツイッターでこのことを説明されたとてもわかりやすいイラストを見つけました。ADHDの当事者であるくーやさん(@kuuyabb_さん)が書かれたものです。(掲載の許可をいただいております。もし、印刷や転載をされる場合は著作者である@kuuyabb_さんの許可を得た上で転載元のツイートを明記するようお願いします。)

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 元のツイートはこちらです。

くーやさんが書かれているように、情報の分別ができない状態は非常にストレスがかかるもの。

聴覚過敏だけでなく様々な感覚の過敏を持っていると、学校などの集団生活や日常生活での刺激が多すぎてとても疲れてしまいます。

息子も学校から帰宅すると、いつもお気に入りの毛布に頭からすっぽり包まって刺激を遮断して休んでいます。発達障害児が疲れやすいというのも、この感覚の問題からくるものが多いと思います。

触覚に過敏があり服の素材や形が合わない、日常の光がまぶしい、特定の匂いが苦手で気持ち悪くなる、様々な刺激がストレスになっている場合もあるのです。

花粉症などアレルギーを持っていらっしゃる方が、環境調整や薬などで軽減せずにそのままなにかの作業に集中して取り組むことはとても難しいと思います。私は慢性蕁麻疹をもっていますが、蕁麻疹が出ているのにじっとしているのは困難です。それと似たような状態だと考えていただけたらわかりやすいかもしれません。かなりのストレスがかかっているのです。

そしてこれは本人でさえ、原因がなにか気づいていない場合があります。生まれつきの感覚は本人にとって当たり前のものであり、他者と違うこともなかなかわからないですし、特に小さい子供の場合はそのつらさを伝えることは容易ではありません。

 

感覚の違いを知るには?

本人も気付きにくい、伝えにくい感覚の違いをどのように察知すればよいか?保護者としては気になるところですよね。

客観的に感覚の過敏や鈍磨の傾向をさぐることができるツールがあります。日頃のお子さんの行動などからおおまかな感覚の違いをつかみ、お子さんが困っていることを代わりに言語化してあげるのもよいかもしれません。

代わりに言語化しながら探っていくことを繰り返しているうちに、今回息子が自分から言い出したように、大きくなるにつれ自分から困難を教えてくれることもあります。

nanaio.hatenablog.com

この記事にも書いてありますが、多動が固有受容覚や前庭感覚によっておきている場合もあります。ADHDをもつ娘の場合は固有受容覚と前庭感覚の鈍磨があり、閾値がとても高いために常に強い刺激をもとめて激しく動いてしまうようです。

感覚は過敏だけでなく、鈍磨によって、落ち着くために不足する刺激を入れることも多々あります。爪をかむ、鉛筆をぼろぼろになるまでかんでしまうのも、不足する固有受容覚に刺激を入れて覚醒をあげるための行為なのです。

 

環境を整える

 感覚の問題は、努力や我慢でなんとかなるものでもありません。つらい刺激はできるだけ避ける、工夫で軽減するなど、環境を整えることが第一になります。

逆に鈍磨で不足する刺激を求める場合は、その行為を禁止するのではなく、代わりになる安全な刺激にすりかえる、例えば派手に動くなら動いていい場所を指定する、噛み癖があるのなら噛んでも安全なものを用意するなどです。

噛み心地に好みがあるので合うものを探すのはなかなか大変なのですが・・うちの子供たちの場合は、いろいろと試した上で、娘は乾燥ダシ昆布、息子はシリコンのカミカミグッズがお気に入りです。

息子の先生の指示が聞き取れない問題は、新年度に入りすぐに学校と相談し、交流学級で席を前のほうにしてもらう、デジタル耳栓の持込を許可してもらいクラスの生徒にも説明をしてもらうという対応をしていただきました。

デジタル耳栓はカクテルパーティ効果そのものをしてくれるわけではありませんが、雑音をカットして人の声を聞きとりやすくする効果があります。周りの声も拾いますが息子は先生の声を聞き取りやすくなったそうです。

キングジム デジタル耳せん   MM1000 ホワイト

キングジム デジタル耳せん MM1000 ホワイト

 

 ノイズキャンセリングホンは他にも色々と出ていますが、デジタル耳栓はスマホなどが必要なく、単品で使うことが出来るので学校に持ち込みもしやすいです。そのほかイヤーマフも必要なときに使えるよう学校に持ち込んでいます。

 

理解のある学校や先生方に恵まれ、こちらが提案したデジタル耳栓の持込みもスムーズに認めていただくことができましたが、これも合理的配慮になると思います。

nanaio.hatenablog.com

 

そのほか、触覚に過敏があれば、着るものの素材や形状などを見直すことで落ち着くこともあるかもしれません。私はタグがだめですぐに蕁麻疹が広がってしまったり、首の詰まった形の服では眠ることができません。タグや縫い目が気になり肌着を裏返しに着ることもあります。

発達障害児によくみられる偏食も、こだわりもあるかもしれませんが、味覚過敏や嗅覚過敏によって食べられない可能性もあります。私自身がかなりの偏食なのですが辛い食べ物は強い痛みに感じるために食べられません。これは大人になっても変わっていません。

 

これはしばらく前にツイッターで感覚についてアンケートをしてみたものです。私自身がもつちょっと人とは感覚が違う?と思うところを書いています。私のフォロワーさんは発達障害関係の方が多いので、当事者の方や傾向のある方など感覚に過敏を持つ方が多い可能性があり一般の場合よりも結果に偏りがあるかもしれません。(3が2つあるのは私のミスです><)

私は疲れていると特に耳に刺さる感覚があります。

日光アレルギーも持っているのでひりひりした感覚があります。

痛いです。ちびちび飲みます。

痛いので食べられません。

これは同じ感覚を持つ人にめぐり合ったことがほぼないので意外といることに驚きました。一日中鼻の奥からにおいがもわ~っとします。

以前記事にも書きましたが私は左右盲です。

nanaio.hatenablog.com

 その場の思いつきでとったアンケートですが、人によって感覚の大きな違いが可視化され興味深い結果となりました。

 

投薬によるフィルター効果

 環境調整だけでは感覚過敏の軽減が追いつかない場合、投薬によって軽減される場合があります。ADHDに処方されるコンサータやストラテラはフィルター効果が感じられる方がいるそうです。ADHD当事者のふみきちさんがコンサータによるフィルター効果について書かれていらっしゃいます。

聴覚や視覚のフィルター効果によって落ち着いた日常生活を得られたふみきちさんの想いが伝わる記事です。

fumikichi2525.hatenablog.com

 お薬の効果は人によって違うのでフィルター効果が得られない、または逆に感覚過敏が激しくなる方もいらっしゃるようなので、主治医と相談の上、合うお薬を探すことが大切です。

学校に行く日だけコンサータを飲んでいる娘に聞いたところ、なにかをギー!!っと噛みたくなる衝動や落ち着かなくて体を動かしたい感覚がコンサータを飲んでいる間はなくなるらしいです。娘の場合は感覚の過敏だけでなく鈍磨にも効果がみられるようです。

そのほか、平面のごちゃごちゃにしか見えなくて物が見つかりにくかったのが立体的に浮いて見えるようになり物が探しやすくなると娘は言っています。

コンサータやストラテラはADHDに限定して処方されるお薬ですが、自閉症スペクトラムのお子さんに使われるエビリファイやリスパダールにもフィルター効果が得られる場合もあるそうです。うちの息子の場合は自閉症スペクトラムだけの診断なのでコンサータは処方されませんが不安が非常に強くリスパダールを飲んでいました。息子の場合はリスパダールでフィルター効果は特に感じなかったようです。(現在は副作用で太り気味なので医師と相談の上、一旦休んでいます)

子供への投薬は賛否両論ありますし、抵抗を感じられる方も多いと思います。我が家の場合も悩みに悩み、医師や本人と長く話し合いながら投薬を決断し、状態に合わせて調整をしつつ投薬を続けています。

まずは環境調整、それでも負担が大きすぎる場合は投薬というのもひとつの手段であると考えています。

nanaio.hatenablog.com

 我が家が投薬に踏み切った過程を書いています。

これは我が家の決断であり投薬を勧めるわけではありません。

 

感覚の違いは様々な困難の原因かもしれない

コミュニケーションや社会性なども発達障害による困難ではありますが、そのほか、集団生活や日常生活で本人が感じる困りごとの多くに感覚の違いは大きく影響していると思います。

繰り返しますがこれは生まれつきの脳の機能の違いによるものなので、トレーニングや我慢でどうにかなるものではありません。視力を補う眼鏡のようにサポートが必要なのです。

サポートできる道具を使う、環境を整えるなどの工夫による軽減も出来ますが、周囲の理解がかかせません。特に自分でも気づきにくいことですので、うまく言語化ができないお子さんの場合、周囲がその原因を探り、気づいて本人に確認をとりながら調整をしていく必要があると思います。

感覚に違いがあるかもしれない、そこに注目し対応を考えていけば、お子さんの困難を大幅に軽減できる可能性があります。

 

※先日、神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」で凄惨な殺傷事件が起きました。

私は犯人の思想を決して認めません。犯した行為を許すことはできません。

残忍な事件の犠牲者の方々とご遺族に哀悼の意と祈りを捧げます。

 

※前記事で私の乳がんについて書いたところ、たくさんの方々から暖かい応援のお言葉、欲しい物リストよりたくさんの品々を贈っていただきました。本当に勇気付けられ、日々の生活も助かっております。生きる力を皆様からいただきました。本当にありがとうございました!現在、3回目の抗がん剤治療が終わったところで副作用でへろへろの日もありますがなんとかがんばれております。今後も見守っていただけると幸いです。

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