うちの子流~発達障害と生きる

発達障害を持つ子供たちとの日々をつづります。

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発達障害があっても特別支援学級をえらばない理由

 こちらの記事を読ませていただきました。

codeiq.jp

 いつも素敵な記事を書いていらっしゃるヨッピーさん(@yoppymodelさん)私も大ファンです。

発達障害について、学校で困難を持った子供達に対する支援、ICT導入の必要性、とてもわかりやすく素晴らしい記事だと思いました。以前、世界自閉症啓発デーでコラボ企画をやったのですが、お金があれば自腹でもヨッピーさんに発達障害について書いてほしいな~と周りに話していたことがあったので(お金ないです)このような記事を書いてくださりたくさんの方に読まれているのは嬉しい限りです。

でも一点だけどうしても言いたいことがあります。

「でも、これだけ細かく子供たちに合わせてやっているのに、親御さんの中には子供を特別支援学級に入れたがらない人もいるって聞きますけど……」

 記事は本当にありがたく素晴らしいと思いましたが、この点だけは実情を知っていただきたいのです。

一般の公立小中学校の特別支援学級においてほとんどが「これだけ細かく子供たちに合わせてやって」いません。がんばってくださっている先生方も出来ない追いついていないのが現実です。

お子さんに困難があり、特別支援学級での細かなサポートが合っていると思われるケースでも抵抗を示す保護者の方がいらっしゃるのは事実です。

自分の子供に障害があることをすんなり受け止められる保護者は少ないですから。何年も悩み苦しみながら受容していく場合も多くみられます。世間体だけではないのです。

しかし、困難がありながら普通のクラスで学ぶ発達障害児はたくさんいます。これは保護者が難色を示して無理やり通わせているケースばかりではありません。

むしろ他の事情によって普通のクラスを選んでいる、選ばざるを得ないケースのほうが圧倒的に多いのではないかと思います。

 

最先端の取り組みと現状との大きな差

記事に取り上げられていた「つくば市立春日学園」はICT教育のモデル校であり、最先端の取り組みをされている学校です。当たり前ですが、ほとんどの小中学校においての特別支援教育はここまで至っていません。

この取り組みが全国に広がってくれることを願うばかりではありますが、現状は子供の困難に合わせてタブレットひとつ持ち込みをしたいと申し出ても受け入れてくださる学校のほうが珍しい状況です。私も学校や市の教育委員会に直接申し出をしましたが断られています。管理の問題、wifiなど設備、予算の問題があるからです。

我が家には二人の発達障害児がおり、娘は普通学級、息子は支援学級に通っています。私の子供たちが通う小学校は素晴らしい先生方に恵まれ、支援環境はとても充実しているほうだと思います。記事で取材されていた学校ほどの体制ではないですが、先生方、学校、行政のご理解と日々の努力のおかげで私の子供たちは学級にかかわらず支援を受け、地域の学校で学ぶことが出来ています。

一方で、ツイッターや親の会で、同じく発達障害児を育てる保護者の方々と交流を持たせていただいていますが、特別支援教育の地域格差、学校格差は本当に大きく、とても「支援」と呼べるものではない酷い状況のところもあるようです。

このような学校や地域においては、障害があるから特別支援学級のほうがよいとは到底いえません。普通学級での困難があっても支援学級より「まだマシ」と思われるケースは多々見かけます。

 

支援学級ではなく普通学級に通っている理由として

・そもそも子供の障害に合った支援学級がない地域がある

・支援学級が排除の場になっている学校がある

・支援学級なのに必要な支援がうけられない学校がある

・普通学級でのサポートでやっていける発達障害児もたくさんいる

・支援学級からの進路が限られてしまう地域がある

・あきらかに差別を受ける場合がある

・家族の反対がある

・子供自身が普通学級を希望する

 

適切な支援をうけられない支援学級もある

特別支援学級の先生には特別な資格が必要なわけではなく、一般の先生が配属される場合が多いです。もちろん熱心に勉強され子供の困難に応じた対応をがんばってくださっている先生方もたくさんいらっしゃいます。

※コメントで支援学級において全ての先生が特別支援学校教員免許を持たれている地域もあると教えていただきました。

一方で、少人数ということもあり、普通のクラス運営がうまくいかなかったり、技術的に問題のある先生が配属されるケースもあります。配属されただけで特に指導方法を子供に合わせて変えようとはしない先生もいらっしゃいます。発達障害に対して全く無理解な方が担任になってしまうことがあるのです。

対応によっては障害特性ゆえに出来ないことを本人の努力不足とされ、学校に行けなくなったり鬱などの二次障害に至り苦しんでいる子供たちもいます。

学校や地域全体が特別支援に対してあまり理解がないのではと思われるケースもあります。

今まで私が聞いた支援学級でのひどいケースでは

「知的障害がない発達障害児(小学5年生)に算数の授業で点つなぎのプリントだけを毎日させている」

つまり本人の能力に関係なく、通常の指導要領の学習を全くさせていないケースもあります。学校で勉強を教えてもらえないために家庭学習で本人や保護者が努力して追いつかなければならないこともあります。

 

「中学校の支援学級に在籍したら、内申点が出せないために公立高校への受験が不可能と言われた学校がある」

これは地域全体、特別支援学級の仕組みそのものの問題もあります。私の住む地域では支援学級に在籍していても希望をすれば内申点を出して受験は可能だと聞いていますが、そのために支援学級に在籍しながらも通常学級と同じテストを受けて同じ課題を提出しなければなりません。

地域によっては最初から支援学級に在籍した以上は内申点を出せないというところもあるそうです。

もともと特別支援教育の前身である特殊教育は知的障害のお子さんに対する教育をベースとしており、カリキュラム自体が普通高校への進学を想定していないためにこういう不具合が起きています。私立高校や特別支援学校、サポート校などへの進路もありますが、経済的理由や大学進学などを考えると公立普通高校への進路を最初から閉ざされてしまうのは納得ができません。

こういうこともあり、支援が必要であっても先の進路を考えれば支援学級に在籍できない、無理をしてでも普通学級に在籍せざるを得ない子供たちがいます。

 

「通常学級でトラブルを起こす子供をただ排除するための場所になっている」

通常学級でじっとしていられなかったり他害があったりするお子さんは確かに支援が必要ではあるのですが、支援学級に移籍して通常学級から追い出しただけのケースはよく聞きます。かといって支援学級でお子さんに沿った支援が受けられているのかというと放置に近い状態で、他の支援学級在籍のお子さんは全く学習にならないこともあります。

 

特別支援教育には専門の知識や技術が必要です。これは普通のクラスであっても同じなのですが、そこまで現場の先生方の研修や意識が追いついていないのが現状だと思います。今の学校の先生方はお忙しすぎるのです。これは予算や制度の問題です。

なので一概に、障害があるから必ず支援学級が適しているとは言えないのが現状なのです。

そのほか、小さい頃から診断や療育を受けていて、普通学級で少しの配慮があればやっていけるお子さんもたくさんいます。

お母さんが熱心に勉強しお子さんのために支援学級を希望しても、お父さんの理解が得られない、おじいちゃんおばあちゃんの反対がある、などもよく聞く話です。

障害があることを理由に一緒に遊んではいけないなどと他の保護者の方から差別的な扱いを受けること、子供同士でも障害を理由にいじめに発展することもしばしばあります。

このように、地域や学校によっては簡単に障害をオープンにするわけにはいかない事情があります。これは世間体だけの話ではありません。

教室でできる特別支援教育のアイデア172 小学校編 (シリーズ教室で行う特別支援教育)

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障害児に対するICT教育が必要なのは普通学級も同じ

特別支援学級には知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害の学級がありますが、知的学級と情緒学級の2種類が95%ほどと大半を占めています。

発達障害児の場合、知的障害を伴う場合は知的学級、そうでない場合は情緒学級に在籍することが出来ます。ただし、発達障害の中でも自閉症スペクトラムや広汎性発達障害の診断や傾向を持つ場合が対象であり、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)だけの場合は特別支援学級の対象ではなく通級指導教室(普通学級に在籍しときどき通う教室)の対応となっています。

1.はじめに:文部科学省

2.特別支援教育の現状:文部科学省

ICT教育が一番有効であると思われるのは読み書きの問題です。

文部科学省の規定では、読み書きに困難を抱えるLD(学習障害)を持つ子供たちの多くは、支援学級ではなく通常学級に在籍せざるを得ないケースのほうが多いのです。

(学校や自治体の判断で支援学級に在籍する場合もありますし、自閉症スペクトラムなど支援学級在籍に必要な診断と学習障害が重複しているケースも多くあります。)

読むこと、書くことなどに困難をもったまま、みんなと同じ一斉授業を受けるということは、小さな子供にとって想像を絶する困難と苦痛だと思うのです。

そして学習障害の多くは就学後にその困難に気付くため、誰にも相談できずに一人悩む子供も多くいます。

ICT教育が、こういう困難を抱えた子供の「眼鏡」となります。普通のクラスにも眼鏡をかけた子供たちがいるように、普通のクラスで当たり前に必要な子供がITを活用できるようになれば、みんなと同じ教室で学ぶことが出来る子供はたくさんいるのです。

そして、そもそも固定の支援学級が知的学級しかない地域があります。そうなると知的障害をもたない限りはどんな困難があっても地域の学校では普通学級で学ぶという選択肢しかありません。

東京都も多くは知的の支援学級だけで、その他の発達障害児は通級指導教室のみの対応となっているようです。東京都では今年度より特別支援教室が始まりました。各校に巡回する通級指導教室のような形だそうです。

こちらは東京都の世田谷区と岡山市の支援体制の違いについて調べた記事です。

nanaio.hatenablog.com

 

予算と人員の問題

特別支援学級は少人数のため、当然、予算と人員がかかります。親が拒否しようがしまいが、普通学級に6.5%もいるといわれている困難を抱える子供たち全員に対して細かな特別支援教育をできるような予算も人員も教室もこの国にはありません。

支援が充実している私の子供たちの小学校では特別支援学級が7クラス。年々増加しています。もともとマンモス校ではありますが、この少子化の時代に教室が足りずプレハブが並んでいます。

それでも普通学級にもたくさんの発達障害児が在籍しています。

今の制度では、自治体全体での配布やモデル校でない限りは、特別支援学級であっても学校がタブレットやPCを用意してくれることはありません。保護者と学校で協議し、自費で用意し持ち込みを認めてもらうしか方法はないのです。(うちは認めてもらえませんでしたが。)

6人に1人の子供が貧困といわれる今の時代です。医療や療育など様々な面で普通の子育てよりもお金がかかってしまう発達障害児の子育てで、どれだけのご家庭が自費で子供にタブレットを持たせることができるでしょうか。

(特別支援学校高等部などでは就学奨励費でICT機器などに補助がでる場合があります。)

国は国連の障害者権利条約に基づきインクルーシブ教育システムの推進という形で、障害のある子供もない子供も共に学べる教育のあり方を模索しています。ITの活用がどの教育現場でも当たり前に行えるようになるのはその第一歩なのです。

ぜひとも理解が進んで、どの子供でも必要に応じてITを活用し、学びにアクセスできる環境が出来ることを願っています。そのためには予算が必要です。

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子供に合わせて環境をえらぶ必要性

私の子供たちは一人は支援学級、一人は普通学級で学んでいます。どちらも診断のついた発達障害児です。在籍が違うのは障害の重さの違いではありません。

本人の希望と必要な支援によって選んでいます。

娘の場合はアスペルガー症候群とADHD(注意欠陥多動性障害)の診断がありますが、4歳から療育をうけ、集団行動や授業にも問題なく適応できています。宿題や運動面の困難、人との関わりに関しては多少の困難を抱えていますが、担任の先生のサポートや連携により毎日楽しく学校に通えています。普通学級で特に無理をしているわけではありません。

一方、広汎性発達障害の息子は、感覚過敏や場面かんもくから、人数が多いこと自体が大きなストレスになります。困っても助けを求めることが困難なため、誰に迷惑をかけることもないのですが一人で困っています。少人数の支援学級で細かい配慮を受けること、静かな環境で学ぶことが彼にとって必要な支援なのです。

息子は支援学級という環境がなければおそらく学校に通うことは出来ません。

我が家は運よく地域にも学校にも先生方にも恵まれた環境にあり、今のところ子供たちが障害を理由に差別的な扱いを受けたこともありません。

このような支援が全国どこの地域でも学校でも受けられるのが理想なのですが、現実は違います。

たまたま生まれた地域、住んでいる地域によって子供の人生が大きく左右されてしまいます。

 

今年の4月から施行された障害者差別解消法に基づく合理的配慮が、公的機関において義務化されました。もちろん公立の学校も対象です。

合理的配慮とは求めた支援をなんでもかんでも実現してもらえるものではありませんが、障害をもつ人たちに必要な配慮について、対等に話し合いのテーブルについてもらうためのものです。まだまだ浸透には時間がかかるでしょうが、限られた予算や人員の中で、先生方や学校と可能な支援を探るきっかけとなるはずです。

ひとりひとりが出来ることを進めていけば、きっといつか大きな変化になるのではと思っています。

ITの活用がどの子供たちにも当たり前のサポートとなりますように。

少しでも理解が広がり、すべての地域で困難を抱えた子供たちが適切な支援を受けられるよう願ってやみません。

nanaio.hatenablog.com

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